前回「妊娠に関する疑問について、イワサクリニックの岩佐院長に伺いました。」の記事公開後、
「不妊ってどんな状態のこと?」
「不妊治療って何をするの?」
などの様々な疑問が編集部に寄せられました。
ということで、医療法人 イワサクリニックの岩佐 弘一院長に答えていただきました。
この記事を読んで、疑問や不安を解消しましょう!
不妊とは?その基準や原因について

今回お伺いしたいテーマは『不妊』と『不妊治療』についてです。
早速ですが、不妊とはどのような状態を指すのでしょうか?
なにか基準のようなものがあるのでしょうか?



結婚したけどもなかなか性交渉ができない夫婦もいるので、そういった事情も含めて1年以上子供が出来なければ不妊症と考えてもらって良いと思います。
不妊とされる人の割合や男女比は?

また、不妊症の男女比はどのようになっているのでしょうか?

割合としては、6~7カップルに1カップルの夫婦が不妊症と考えられており、20人に1人が不妊治療でできた子供と言えます。
不妊の原因や理由とは?決して女性だけが原因ではない?


精液を検査する場合、「精液量」「精液の濃度」「精子の運動率」の3つを見ます。
精液量が2m以上で精液の濃度が20×106/ml、運動率が40%以上あれば正常な精子と判斷されます。
精子が極端に少ない人は、なんらかの遺伝要素が関係している可能性が有ると言われています。


昔と比べて男性の精子の数や運動率が低下してきているとも言われており、ストレスなどの要因も影響してきている可能性があります。

また、不妊症は増加してきているのでしょうか?

1番の要因は年齢の問題が大きいと思います。
男性に比べて女性の方が年齢による卵子への影響が大きいからです。
そのため、晩婚化が進むに伴って、加齢による不妊症が増えてきていると考えられます。加齢が進むということは、月経の回数が多くなるということです。
月経の回数が多いと、不妊症の大きな原因の1つである子宮内膜症になりやすくなります。また、性交渉の相手が増えるほど、性感染症になるリスクが高くなります。
性感染症で有名なものは「クラミジア感染症」があります。
クラミジアに感染してしまうと卵管が狭窄してしまったり、詰まることによって不妊症につながる可能性があります。
妊娠するまでに月経の回数が増えると、子宮内膜症になりやすいというだけでなく、それだけ多くの卵子を消失していくことにもなります。
月経では普通1つの卵子が排卵されると思うかもしれませんが、卵子の中でも競争があるので、排卵のたびに何十個という卵子が消失してしまいます。
しかし、明治のような子沢山の時代では、現在と比べて40歳を過ぎた人でも子供ができやすかったと言われています。
そのような背景には、女性が何度も妊娠を繰り返していたからではないかという説があります。
妊娠している期間では排卵が止まっているので、高齢になっても卵子がストックされていたからではないかという理由です。
これと同じようなことをしようと思うのであれば、低用量ピルを服用することです。
低用量ピルを服用することにより、子宮内膜症の予防や無駄な卵子の消失を防ぐことができるので、不妊症になる人が今より減るのではないかと言われています。


低用量ピルを服用することで1番のデメリットは血栓症を引き起こす可能性があることですが、10万人に数例程度と発症する確率はかなり低いと言えます。
また、低用量ピルを初めて飲む人には血栓症が起きないように選別した上で処方されるので、リスクという意味ではそこまで高くないと思います。
不妊の検査方法とは?男女で検査方法は違うの?

不妊症の男女比が1:1ということなので、赤ちゃんができにくいというカップルの方には男女共に検査を受けていただきたいなと思うのですが、検査方法はどのようなものがあるのでしょうか?



ほとんどのクリニックでも採取してから2時間以内であれば検査が可能な場合が多いので、男性が直接来て採取しなくても検査することができます。




排卵が起きているかどうかを基礎体温で確認します。
基礎体温を確認することは、黄体期が十分にあるかどうかを見る上でも重要です。
黄体期が短すぎたり、体温の上昇が低いなど、黄体ホルモンが十分に分泌されていないと不妊症の原因になってしまいます。次にホルモンの検査を採血で行うことができます。
ただし、ホルモンは常に変動しているので、採血での結果だけを見るのではなく、基礎体温と合わせて確認することが大事です。他には、卵管の通りを見る卵管造影検査やヒューナーテストを行います。
ヒューナーテストでは、十分な量の精子が子宮内に到達できているかどうかを検査します。
ヒューナーテストの結果、精子が上手く子宮まで進入できていないという人は、子宮内に直接精子を入れる人工授精を行います。


排卵していれば体温が上昇するので、それまでに基礎体温をつけている人であれば、ご自分でも排卵しているかどうかを判斷することができます。
そのため、まずはご自身で基礎体温をつけてみるということは有効な方法だと思います。
不妊治療の種類とは?


授精するためには、精子が子宮頸管という入り口から卵管を通過して、卵管采という卵巣に非常に近い場所まで辿り着かなければいけません。
授精した卵を受精卵と呼びますが、その受精卵が一週間ほどかけて子宮へと戻っていき、着床します。
つまり妊娠の可能性を高めるには、より多くの精子が排卵した卵のところまで到達する必要があります。
不妊症の治療方法として、タイミング法、人工授精、体外受精があります。タイミング法とは、排卵の予測日を推測し、その1~2日前に性交渉をしてもらうというものです。
なぜ予測日の1~2日前なのかというと、卵子というのは排卵してから、ほぼ12時間ぐらいで死んでしまうのですが、精子というのは3日から一週間ぐらい生きているのではないかと言われています。
排卵日をピンポイントで予測することは難しいので、その予測日の1~2日前に性交渉をしてもらうことで妊娠する確率を高めます。排卵日は、基礎体温と超音波の検査によって予測していきます。
超音波の検査では卵胞の大きさと子宮内膜の厚さを見ていきます。
排卵する卵の大きさがだいたい18mmぐらいになってくると排卵の1~2日前という状態で、20mmを超えるといつ排卵してもおかしくない状態です。
あとは病院にもよりますが、尿による排卵チェッカーを行い、陽性であればその時点から性交渉を多くしてもらいます。
タイミング法を行う条件としては、男性の精子が正常であり、女性に不妊症の原因がない場合に限ります。


つまり、検査の結果がどれも問題ないにもかかわらずに妊娠に至っていないという人に限り、タイミング法での治療を行います。タイミング法を行う目安はだいたい5回と言われていますが、女性の年齢によって回数は変えていけば良いと思います。
例えば年齢が高い女性であれば、タイミング法を何度も試すよりも、早めにもうワンランク上の不妊治療に切り替えていくというのでも良いと思います。次のステップとしては、人工授精です。
人工授精でも排卵予測日の1~2日前に子宮の中に直接精子を注入するという方法です。
旦那さんの精子の数や濃度、あるいは運動率が少し悪いという軽度の異常がある場合は、人工授精で直接子宮に注入してあげることで、より多くの精子が卵に到達できるようになります。
そのため、精子に軽度の異常がある男性や、ヒューナーテストで十分な精子が子宮に到達できていないという結果がでた女性は、最初から人工授精を行う場合もあります。
人工授精を行うためには、女性に排卵が行われていて卵管に問題ないことが条件です。
最後にタイミング法や人工授精よりもより高度な治療方法が体外授精です。
女性が高齢である場合や、男性の精子に中等度から重度の異常がある場合に行います。
治療のステップとしては、タイミング法、人工授精、体外受精という順番が基本的ですが、年齢が高い女性や男性の精子中に重度の異常がある場合などは最初から体外受精にしたほうがよいかもしれません。
どのような治療法を受けるかは、奥さんの状態よりも、むしろ旦那さんの精子の状態で変わってくると言っても良いかもしれません。
精子に異常がなければタイミング法から治療できますし、軽度の異常であれば人工授精、中等度から重度の異常があれば最初から体外授精となります。


不妊治療では痛みはあるの?


痛みを伴うとすれば、女性の場合だと卵管造影の検査で造影剤を通すときにお腹の痛みを多少感じるかもしれません。


できれば検査していただくことをおすすめしますけど、多少痛みを伴う検査なので、スクリーニングを行った上で造影剤を使っても良いと思います。
スクリーニングという意味では、先にクラミジアなど卵管の異常を起こす菌に感染していないかを事前に調べて、そこで感染の疑いがないのであれば、無理に卵管造影の検査を受ける必要はないかもしれませんね。


ただし、子宮頸管の形状や大きさには個人差があるので、頸管が狭い人だと多少の痛みを伴うことがあるかもしれません。
そういったことがなければ、そこまで痛くないのではないかと思います。
不妊治療を行うとダウン症の可能性があるって本当?


妊娠する年齢が高くなると、それだけダウン症の子供ができやすくなると考えられているからです。
そのため、不妊治療で妊娠したからダウン症になりやすいというよりも、高齢での妊娠などダウン症になる要因を持った人が不妊治療を受けているケースが多いということだと思います。


不妊治療の費用はどれくらい?保険は適用されるの?


その代り、不妊治療に対する補助金があります。
しかし、必ず補助金が出るわけではありません。
場合によって支給条件はことなりますが、補助金を受けるためには、年齢が43歳未満であることと、日本産婦人科学会から認められているような施設で治療を受ける必要があります。
不妊治療の値段に関しては、施設によってまちまちなので相場の料金というものは難しいですね。

不妊治療をしようと思ったときに、事前にクリニックに問い合わせれば概算の費用を教えてもらえるのでしょうか?

体外受精は特に費用が高くなりやすく、施設によって値段設定がまちまちなので、事前に費用を確認しておくと良いでしょう。費用を抑えるためにも、治療をスムーズに進める必要があるので、まずは男性が検査を受ける事をおすすめします。
不妊治療のやめどきはいつ?目処はあるの?


年齢にもよりますが、タイミング法であれば、30代前半ぐらいまでの女性であれば5回程、30代後半であれば2~3回程度で次の治療へとステップアップしていっても良いと思います。
最終的には体外受精による治療になると思います。体外受精は卵巣を刺激してなるべく多くの卵を採取し、体外で精子をかけて受精卵(胚)を作り、胚を子宮内に移植する方法です。体外受精はやめどきを判斷することが難しい治療でもあります。
一度体外受精の治療を始めると、子供ができるまでやめたくないという心理が働くのだと思います。
しかし、体外受精は回数を重ねれば妊娠率がアップするというわけではないと言われています。
そのため、胚移植を5~6回程続けてもできなければ、それ以上繰り返しても子供はできにくい可能性があるので、そのあたりが目安ではないかと思います。
もちろん、それ以上の回数を行って子供ができたという人もいるので、5~6回が体外受精の限度というわけではありません。
そこまで治療を頑張ってきた患者さんにとって、治療を諦めるということは非常に忍びないですし、ドクターの方から諦めなさいということも言いづらいので、やめどきを判斷することは難しいと思います。私からおすすめする方法は、旦那さんと相談して胚移植を何回までするかなど、自分なりに回数の区切りを作っておくと良いのではないかと思います。
予め、体外受精を何回まで行うかを決めておき、そこをやめどきにするということです。


5〜6回胚移植した後は、累積妊娠率は頭打ちになってしまいます。なので、5〜6回の胚移植を目安にしてもらえれば良いと思います。
病院を選ぶときの注意点やポイント


まずは、そういった情報をちゃんと教えてくれる病院を探すと良いと思います。
費用の面でいうと、日本産婦人科学会から承認を受けているような施設でないと、そもそも補助金が出ないので、そこは1つのポイントになると思います。
各クリニックで値段設定に違いがあるので、事前に費用を確認しておくことも重要です。
特に高額な体外受精では、1回の採卵までの値段なのか、胚移植にはいくらかかるのか、薬代は費用に含まれているのかなど、細かく確認しておくと良いでしょう。妊娠の成功率についてですが、クリニックによってどのような数値を成功率として出しているのかまちまちなので、何をもって成功率としているのかを確認しておくと良いかもしれません。
また、いくら妊娠しても流産してしまうこともあるので、赤ちゃんができるまでの可能性を聞いておくことも大事だと思います。


一度の採卵で赤ちゃんができるまでの可能性を出しているところもあれば、胚移植してから赤ちゃんができるまでの可能性を成功率としている病院もあります。実は、一度に卵が採れる数にはかなり個人差があります。
1~2個しか採れない人もいれば、一度に20個近く採れる人もいます。
体外受精では、採れた卵に外から精子をふりかけて授精させるので、当然、採卵数が多い人ほど授精する可能性は高くなります。
その後、受精卵を3~5日ほど培養してから子宮内に戻すのですが、受精卵が多い人ほど胚移植するチャンスが多くあるわけです。たくさんの卵が採れた人で採卵あたりの確率をだせば、成功率は高くなりますよね。
逆に胚移植あたりの成功率だと、採卵数の少なかった人と多かった人で成功率の差はそこまで出てこないことになります。
大体の目安としては、胚移植してから赤ちゃんになるまでの確率で、20代から30代前半の人で2割程度、40歳を超えると1割を切ってしまいます。


治療を受ける年齢に合わせて成功率を確認すると良い>と思います。
例えば、40代の方で治療を受けるなら、胚移植あたりの成功率が1割あるような施設であれば問題ないと思います。
それ以上の成績が出ているのであれば、かなり優良な施設だと言えるかもしれませんが、その場合は何をもって成功したのかという点をちゃんと確認しておきましょう。
不妊センターの特色とは?普通のクリニックとは違うの?


30年の実績と豊富な経験があり、北海道など遠方からも患者様が当院に来られます。
妊娠された患者様がのちに喜びの連絡を下さったりします。
スタッフ一同とても嬉しくなります。
体外受精を行うためには、採卵の設備や卵を培養するための専用の設備が整っていないといけないので、不妊治療を行っているクリニックでも体外受精まで取り扱っていない場合もあります。

ありがとうございました。
不妊治療を受けるべき理由とは?

クリニックに行かずにご自身たちで妊娠まで頑張るという選択肢もあるかと思うのですが、あえて不妊治療を受けて欲しい理由などはありますか?

その年齢を過ぎると、ぐっと妊娠できる確率は減っていってしまうからです。
そのため高齢な方で妊娠を希望しているのであれば、できるだけ早めに不妊治療を受けた方が良いかもしれません。

岩佐先生ありがとうございました。
名称 | 医療法人イワサクリニック セント・マリー不妊センター |
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