便秘でお腹が張って苦しい、便秘になると肌の調子が悪いなど便秘は様々な体のトラブルにつながります。
便秘に悩んでいてもデリケートな問題なだけに悩みを相談しにくく、解消方法もわからないという人も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、藤田胃腸科病院 院長 本郷 仁志先生に便秘の解消方法を中心に「便秘に効果的な食べ物」から「便秘と寿命の関係」など、便秘に関してとても興味深いお話しを伺ってきました!
便秘とは一体なんなのか?
便秘の定義について

そもそも便秘とは、以前とは定義が異なり、本来体外に排出すべき糞便を『十分量』かつ『快適に』排出できない状態を意味するとされています。
以前は週に2,3回出ない等といった具体的な数値が定義されていましたが、今はあくまでも便秘が個人の生活の質を落とすという観点から、このような曖昧な表現になっています。
ただ、これもまた将来的には変更される可能性があるかもしれません。
そうは言っても、日本人がどのような時に便秘と感じるかというデータはあり、次の3点が挙げられています。
・週に4回未満の便
・硬い便の排出
・残便感
便秘は様々な病気を誘発させる可能性が?

まず、便秘は病気という認識を持って欲しいと思います。多くの方は便秘という認識はあるのですが、便秘が病気だという認識が低いことが問題と考えています。
なぜなら、便秘を持っているか持っていないかで、10年後の予後や寿命が10%変わるという海外のデータも出ていることから、便秘は病気であるという認識を持つ必要があると考えているからです。
なぜ便秘が寿命に関わるのかというと、便秘が進むにつれて心筋梗塞や脳卒中といった病気の発症や腎臓病の発症が増えると言われているためです。
あくまでも現在の定義は患者様の主観的なものですが、甘く見ずに病気と認識することが非常に重要と考えています。
便秘には2種類のタイプがある

便秘には
1:排便回数減少型便秘
2:排便困難型便秘
と2種類のタイプまたは両者合併にわけることができます。
この違いとして簡単に伝えると
排便回数減少型便秘は腸が動くかどうか、排便困難型便秘は腸が便を出せるかどうかという違いがあります。
動かなければ回数が減りますし、出せなければ残便感というように繋がります。
ただ、この2つに完全に分けられるのではなく、治りにくい例ではどちらも混ざっている患者様が多くいらっしゃいます。
我々は問診である程度判断はしますが、画像を使ってきっちりと診断していきます。
排便時間の長短ですが、目安としては1分が1つの目安と考えています。
これは哺乳類の排便時間は12秒とされていることからです。
つまり、自覚症状としては
・排便困難型
・回数
といったところで判断していただくと良いと思います。
そもそも便意を感じないという患者様もいらっしゃいますので、1日1回決まった時間に座ってみるというのも伝えることもありますが、とにかく様々な要因で様々な型の便秘があるので、一度検査や医師に相談されることをおすすめします。
ダイエットと便秘の関係性について

そうですね。まず、単純に今まで食べていた食事量を減らすと便の量が減り、通過時間が遅くなるため、出る量も少なくなり、便秘になることが挙げられます。
反面、運動を取り入れたダイエットを行う場合は腸を動かす効果があるため、ダイエットが引き起こす便秘の弊害を減らすことが出来ます。
また、現在主流の糖質制限や炭水化物抜きのダイエットは主食を食べずにおかずだけ食べることも多く、白米を適度に摂取した方が便通には効果があるとされています。特に白米と言っているのは、パンや麺類(小麦粉製品)では、ガスの量は増加するが、便秘の改善はしないことが多いとされています。
便秘とは離れてしまいますが、単純に食事を減らしたダイエットを行った場合はどうしても筋肉量が減少します。また、リバウンド時には体脂肪から増えやすいため、運動を行い、筋肉量を適切に維持しながら体脂肪を減らしていくようにバランスの良い食事を心掛ける必要があります。
便秘の基本的な改善方法
まずは生活習慣の見直しが大切!

まず何かというと生活習慣の見直しです。
規則正しいほうが良いのは当然ですし、腸が大きく動くタイミングというのは1日に数回あり、それが朝食の後に起きやすいことから、生活習慣を正し、しっかりと起床し、朝食を摂ることも重要です。
画一的にこれをすればいいと決めることは難しく、あくまでも全てトライアルという意味にはなりますが、朝起きて冷たい水を飲むなどが一般論として挙げられます。その他に挙げるとするならば
・水溶性食物繊維(Ex緑色のキウイ)、白米を積極的に食べる
・おしり歩き、ねじれ腸エクササイズ、腹圧トレーニング
・排便姿勢の工夫
・排便時間を作る
これらが一般的に効果があるとされているので、まずは試してみることも良いと思います。
食物繊維が弊害になることも!?
その他ということになると今までに治療歴等がなく、フレッシュな状態ということが前提条件にはなりますが、食物繊維を摂ることが必要です。
食物繊維を摂ると便の量は必ず増加します。便の量が増加すると200gまでは便の通過時間が早くなるというデータがあります。
ただ、ここで問題なのが、便秘の患者様は通過時間が遅い方もいらっしゃいますので、便の量が増えているにも関わらず、便の通過時間が遅いため、便が蓄積されていき悪化することもあります。
ですので、一概に食物繊維を多く摂取することが良いとは言い切れないというのが便秘の病気としての怖さでもあります。
また、週に5回15分の腹壁マッサージを行うとプラスだということは挙げられているので、試してみても良いかもしれません。
腹壁マッサージは『のの字マッサージ』が代表的です。
便秘の時にしてはいけないこと
逆にしてはいけないこととして患者様に知っていただきたいこととしては、刺激性下剤を『常用』することは避けていただきたいと思います。その前に一度相談していただけると適切な使用方法等をお伝えできます。
難消化性デキストリン(水溶性食物繊維)などを摂取することは効果が出る場合もあるため、試していただくことは良いと思います。
ただ、何かを行う場合は、何に対して行うかを考えて決めてから行ってほしいと思います。体に何となく良いからという理由で行うと逆効果であることもあることに注意が必要です。
便秘に効果的な食べ物は?

便秘に効く食事は前述したように
通過時間、排便造影が両方とも正常な人には食物繊維の摂取が効果的です。
ただし、排出障害の有る人には効果が無い場合が多いです。
便秘に悩まれておられる方は、既に食物繊維の積極的な摂取は試しておられる方が大半かと思います。
食物繊維で効果がない時はFODMAP食
そこで、食物繊維の摂取で効果が出にくい患者様におすすめしているのが低FODMAP食というものを紹介しています。
低FODMAP食というのは
・F Fermentable 発酵性の
・O Oligosaccharides オリゴ糖
・D Disaccharides 二糖類
・M Monosaccharides 単糖類
・And
・P Polyols ポリオール
これらのお腹の不調を引き起こすと考えられる特定の糖質の頭文字をとったもので、FODMAPを含む食品を少なくした食事のことを『低FODMAP食事療法』といいます。
これは科学的根拠に基づいた『お腹の調子を改善させる食事療法』で過敏性腸症候群(IBS)ガイドラインでも、食事療法として推奨されています。
一般的に良いとされている、納豆やヨーグルトなどの発酵食品や、オリゴ糖などの健康食品、ごぼう、さつまいもなどの食物繊維をたくさん食べても、お腹に効果のなかった方、ガスが多い方、便通異常の方に特に効果を発揮します。
代表的なFODMAP食
低FODMAP食材の代表的なものとしては以下のような食べ物です
・白米
・魚
・肉
・卵
・小松菜
・にんじん
当院で特におすすめしているのは
・緑色のキウイ
・白米
です。
もちろんこれも全員に当てはまるわけではないので、前述したような症状が有る方やその他我々がおすすめする方にしばらく続けて頂いています。
便秘に効果的な飲み物は?

飲み物で特にお勧めしているものはないのですが、強いて挙げるとするならば、前述した低FODMAP食材のジュースは良いかもしれません。
一般的に体に良いとされているものでも高FODMAP食材に該当する場合が有るため、注意が必要な方もいらっしゃいます。
キウイジュースのお勧めレシピ
材料(2杯分)
・緑色のキウイ3,4個
・砂糖大さじ2(好みの量に調整)
・お湯大さじ4
・氷(小さく砕いたもの)適量
参考【Rakutenレシピ『すっぱさがクセになる☆キウイジュース レシピ・作り方』】
どうしても治らないなら病院での診断も


もちろん病院でも診ることは可能です。
病院では圧倒的に使用できる薬の種類も多く、出来ることが増えます。
また専門性の高い病院では正確な評価が可能です。
前述したように便秘には型があるため、正しい評価を行い、便秘に向き合い、治療していく必要があります。
例えば藤田胃腸科病院では
・便の通過時間の遅い、早いを計測
・腸の形の検査
・排便困難感があれば排便造影の撮影
このように様々な検査で原因を調べることが可能です。
排便時の筋力の使い方、排便の姿勢や解剖学的な異常がわかり、例えば姿勢を正すだけで便秘が改善するケースがあります。
まずは、ご自身の便秘の原因を正しく知り、正しく向き合うことが重要ですので、一度専門の外来を受診されることをおすすめいたします。
あとがき
便秘で悩んでいる方の中には「何を試しても治らない」という声もよく聞きます。
今回のお話しから、便秘を改善するためにはまず、自分自身の便秘の原因を見つけることが大切だと感じました。
そして、自分で対策するのも大切だと思いますが、どうしても治らない場合は病院で診てもらってくださいね!辛い便秘を治してスッキリした毎日を過ごしてください!
名称 | 医療法人 祥佑会 藤田胃腸科病院 |
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所在地 | 〒569-0086 大阪府高槻市松原町17-36 |
診療時間 |
午後:13:00〜19:00 |
公式ホームページ | https://www.fujita.or.jp/ |